オーソモレキュラー療法(分子整合栄養医学)とは、1950年代からアメリカで研究され始めた最新の栄養学です。細胞レベルでの栄養代謝と疾患の関連性が研究されています。そのため、一般的に用いられている栄養学とは、かなり違います。
栄養の過不足と病気の関連性を突き止め、食生活の改善や意図的に栄養補給を行うことで、病気の改善・予防をする新しい医学的治療法です。(現在一般的に行われている病気の治療法は、薬物療法と言われ、薬理作用を用いて生体を制御するものです。栄養のことは、ほとんど考えていません。)
もともと人体が合成・代謝している栄養素だけを利用しますので、身体にとっては非常に優しく、安心して治療を受けることができます。(薬物治療の場合、人体には存在していない物質を使うことがほとんどですので、副作用に十分注意する必要があります。)
多くの病気の背景には、栄養バランスの乱れが隠れています。特に難病といわれる病気ほど、栄養バランスの乱れが関係しています。
もし
栄養の不足が病気の原因だった場合、この不足している栄養素を、食生活の改善やサプリメントを使って意図的に補給してあげれば、病気は改善します。ところが栄養補給をしないまま治療しようとすると、当然ですが、なかなか良くならない、あるいは一時的には改善するけれど、再発してもっとひどくなってしまうという事態が生じます。(ここが薬物治療の欠点ともいえます。ただし、栄養バランスの乱れが少ない場合は、薬物治療は即効性があり、うまく利用すればたいへん重宝します。)
現代医学では、栄養バランスを考慮した治療はほとんど行われていません。栄養に関しては、見向きもされていないのが現状です。そして、しっかりした栄養学の知識を持った医師も、残念ながら今のところ日本にはまだ少ないです。
現在難病といわれている病気も、分子整合栄養医学の立場からアプローチすると、とても単純な病気と判断できるものが多いです。単純な病気ですから、治療によって改善しやすいです。その場合、それは難病とは言いません。アプローチの仕方によって難病にもなれば、単純な病気にもなるのです。
治療の要となる栄養バランスの乱れは、どのようにして見つけるのでしょう?
何とそれは、血液検査でわかります。みなさんが健康診断で行う血液検査でできるのです。実際には、健康診断の検査項目よりも、もう少しだけ検査項目を増やして調べますが、いつもの血液検査と変わりありません。
特別な大変な装置を設置していないとできないということはありませんので、わざわざ大病院まで出かけて検査をしなければならないという面倒さはありません。血液検査ですから、ものの数分で終了です。検査費用もそれ程かかりません。
分子整合栄養医学では、血液データの解釈の仕方が重要になります。単に、「基準値の中に入っているので問題ない」とするデータの読み方では、判断を見誤ります。
実際、健康診断では問題ないと言われたけれど、ナンか体の調子が悪いという方はたくさんいらっしゃいます。また、いろいろ検査したけれど、結局「原因がよくわかりません」と言われた方は、単に担当医師のデータの解釈が不十分であったと考えられる場合が多いと思います。栄養学的な解釈がなされていないのです。
分子整合栄養医学的に血液データを解釈するには、たくさんの知識と経験が必要です。その訓練を受けていないと、同じ検査データをみても、正しい判断がつけられません。
ここで、具体的に例を挙げてみましょう。
20才代 女性 うつ病・不安神経症
検査データ |
|
検査結果 |
基準値 |
TP(総蛋白) |
7.2 |
6.5〜8.2 |
AST(GOT) |
13 |
10〜40 |
ALT(GPT) |
8 |
5〜45 |
ALP |
132 |
120〜245 |
BUN(尿素窒素) |
10.7 |
8〜20 |
Hb(ヘモグロビン) |
11.8 |
11.2〜15.2 |
フェリチン |
10.3 |
5〜157 |
上記の検査結果では、
●一般的な医師の解釈
・栄養状態問題なし:TP(総蛋白)
・肝機能正常:AST・ALT・ALP
・腎機能正常:BUN(尿素窒素)
・貧血なし:Hb(ヘモグロビン)
・貯蔵鉄正常:フェリチン
→全て基準値内の結果であるので、特に問題なし
→症状は精神的な要因が大きい
このようになります。
ところが、
●分子整合栄養医学的解釈を致しますと、
・
ビタミンB(特にビタミンB6)が不足:AST・ALTの値がかなり小さい
・
亜鉛が不足:ALPの値が小さい
・
蛋白代謝が低下している:BUN(尿素窒素)の値がだいぶ小さい
・
かなりの貧血である:Hb(ヘモグロビン)の値がかなり小さい
・
重症の鉄欠乏である:フェリチンの値がとても小さい
→
うつ病・不安神経症の症状は、栄養バランスの乱れから起きている可能性が高いと判断
→
すぐにでも、鉄・ビタミンB群(特にナイアシン・ビタミンB6)はしっかりと補給した方がよい
となり、一般的な医師とは、解釈も治療法も大きく違ってきます。
このように、
血液検査の結果は同じでも、解釈の仕方が違うと治療方法も違ってきます。
今まで、血液検査上は問題ないと言われてきた方は、一般的な解釈の仕方で問題ないとされていた可能性が高く、分子栄養医学的には、かなりの問題を含んでいた可能性があります。
・なかなか治療効果が出ない方
・たくさんのお薬を飲んでいて、お薬を減らしたいと考えている方
・検査しても問題ないと言われたけれど、どうしても調子が悪い方
このような方は、一度オーソモレキュラー療法(分子整合栄養医学)的に血液検査をしてみることをお勧めします。
オーソモレキュラー療法(分子整合栄養医学)の基本
オーソモレキュラー療法(分子整合栄養医学)の基本は、
- まず血液検査で、栄養の過不足を見つける
- その血液検査に見合った食事の仕方を考える
例えば、
- 血糖調整が悪くなっている、糖質が過剰に摂取されていると判断された方は、糖質(炭水化物や甘いもの)を減らすようにする
- ビタミンB1・B3・B5・B6が少ないと判断された方は、豚肉や鶏肉、鰹やマグロを多く食べるようにする
- ビタミンB12・葉酸が少ないと判断された方は、昆布・海苔・あおさなどを多く食べるようにする
- タンパク質が足りないと判断された方は、肉・魚・豆製品を多く食べるようにする
等です。(この他にも、状況に合わせ、いろいろな食生活での注意点があります。)
- あまりに不足が大きいと判断された栄養素に対しては、食生活の改善に加えて、サプリメントで不足した栄養素を補給します。栄養補給を食事だけで行おうとすると、予想外のたくさんの量を食べる必要が出てきます。
現実的には、その量を毎日食べることはほとんど不可能ですし、食費もかなりかかります。サプリメントを使えば、いつもの食事量で済みますし、経済的にもかなり負担が少なくて済みます。
私は毎日いろいろなサプリメントを飲んでいるから大丈夫、と思っている方がいらっしゃいますが、残念ながらあまり当てにはできません。今現在、自分の身体はどの栄養素を必要としているかのポイントを押さえていないと、足りている栄養素を一生懸命補給していたり、選んでいるサプリメントは正しかったが、補給すべき量があまりに少なさ過ぎて効果が出てこないという状況に陥りやすいのです。
身体が必要としている栄養素の種類や量は、仕事や食生活といった生活習慣で、一人一人違ってきます。生まれつき、特定の栄養素の消費が激しい方もいらっしゃいます。
自分は現在、どの栄養素を必要としているのか、この先どの栄養素が不足しがちになりやすいかというポイントを押さえて、その栄養素を毎日どのくらい補給する必要があるのかをきちんと判断することが、とても大切です。
それをきちんと判断できるのが、オーソモレキュラー療法(分子整合栄養医学)なのです。国内では、唯一の治療方法といえるでしょう。